わたしに踏まれた星とわたしが踏まれた星

ホロスコープ1年生。名前は「蜷(にな)」です。

目覚める前に 眠り入れ

睡眠時間は短いほうだ。というか、早起きが習い性だ。ASC牡羊座のなせるわざなのか、平日では5時、休日では4時半に起き出してごそごそと支度をし、外へと出ていく。裁量労働制なので何時から出勤してもよい(たぶん6時半くらいには開いているのだろう。確かめたことはないけれど)。朝は静かで、誰かが話しかけてくることもなく、目の前の仕事に没頭できる。

"ーーそれは早朝の数時間という、いわば一日のうちでいちばん「非社会的」な時間に、孤独にこもった状態で書かれている"

ヴァレリー 芸術と身体の哲学』(伊藤亜紗

早朝を「非社会的な時間」と述べているところがとてもいい。「早起き」はまるで小学生の標語か、老人のラジオ体操のための言葉となり、健康健全の代名詞とされるが、わたしが実感するところでは、コミュニケーションを避けたい人間の最後のよりどころだ。(ほとんど)誰もいないオフィスに入る。誰の目線も集まらない。挨拶もしなくていい。黙ってかばんをおろし、パソコンをつける。しばらくすると、徐々に同僚が出社し始める。おうむ返しのように自動的に挨拶をかわせばよい。

思えば、小学生のころから、「たくさんの人がいる教室に入る」というのが苦手だった。できれば一番早く席に着いて本でも読んでいたい。出来上がっている輪の中に自然に入る、ということがどうしてもうまくできなかった。真っ先に部屋に飛び込み、居場所をこしらえたら、やがて訪れる喧騒はわたしの味方になる。

結果的に睡眠を軽んじている。天王星は「覚醒」の星だ。その作用は電気にたとえられる。中枢神経系の喜び。肉体から独立した、大脳の幸福。前夜祭的なパワーに突き動かされるまま、「次は何?」「次は何?」「次は何を?」と先へ先へ急き立てられる。不動宮×活動宮の組み合わせの厄介なところで、駆動し始めるとコントロールが利かない。エンストするか、壁に激突してとまるか、そのどちらかだ。

海王星はきっと言う、「目覚める前に眠り入れ」と。眠りの力は、化学反応というよりも醸造だ。わたしはほかのいきものと一緒に、猥雑で混沌としたプールに注ぎ込まれ、攪拌され、いのちのカクテルに成り果てる。「次」も「先」もない。急ごうにも方向性がない。わたしは酩酊して、崖下に墜落する。暗転。

昼寝をすると夜眠れなくなる、という人もいるが、わたしは何時間寝ようと夜はしっかり睡眠をとることができる。寝つきもよい。「いきなりしゃべらなくなったから、どうしたのかと思った」と言われる。自動的。5時間以下の睡眠のときには夢をみない(覚えていないだけかもしれない)。長くなればなるほど、悪夢に見舞われる。夢の中さえ、遅刻をおそれている。道迷い、寝坊(寝坊する夢というのもおかしな話だ)、乗り間違い、あるいはもっと抽象的なものになると、"急いでいるはずなのにノロノロとしか進めない"

わたしには「遅れをとる」ことへの恐れ、そして反転して強い関心がある。行き過ぎて「フライング」してしまうのは、背中を脅かされたくないからだ。弱いものの本能なのかもしれない。競争力のない個体ほど他者に先駆けて安全を確保し、また危険を予期すれば、すばやく移動していかなくてはいけない。元いた場所に帰ることはできない。生々しいリアリティとしては流離の日々であり、「行きて帰りし物語」ではない。

夜では「多すぎる」。夜には夜の社会があり、ルールがあり、他者がある。早朝がよい。日差しも適度にやわらかく、しばし夜の汚雑を駅舎の柱などに見かけることはあっても、人影はない。社会の存在しない時間は、やさしい。

だけどきっと、夜を恐れるあまりに夢をおそれてはならない。居所を転々とする中で、唯一わたし自身のアドレスとなってくれるのは、夢の中にほかならない。NHKチェコ特集で、インタビューされた男性が答えていた。「われわれは何百年も他国に支配されてきたので、心の中に亡命するしかなかった。チェコ人は皆心の中に宇宙がある」。

わたしはわたしの宇宙で安心して眠れるだろうか。

天王星くんとの距離感

天王星くん、水瓶座の支配星。なんだけど、わたしはまだ土星さんのほうに親しみを覚える。天王星くんは自由と革命の星。発明や独創性を司り、個性的で独立心の強い気質を生む。もう文句のつけようもなくかっこいいんだけどさあ、なんていうの?人間味?それが欲しいっていうか(トランスサタニアンに言うべきセリフではない)

でもこないだリズ・グリーンの著書を読んでいたとき、「土星(クロノス)が天王星(ウラヌス)を去勢した」と書かれていて、雷に打たれたような衝撃を受けた。ウラヌスが「異状」の息子たちを冥界の牢獄に閉じ込め、その妻ガイアが怒り、末っ子クロノスを使ってウラヌスを去勢させる。こう考えると、革命・公正性のイメージは、むしろ土星に与えられるべきものなのでは、とすら考えてしまう。

しかしながら、ギリシア神話がおもしろいのは、「歴史は繰り返す」という点。クロノスもまた、ウラヌス去勢の際にガイアが身籠った「異状」の者たちを幽閉し、ゼウスに殺される運命となる。秩序を壊し、秩序をつくり、秩序と共に滅びてゆく。土星天王星は交互に入れ替え可能だろうか。実は、少しずつ違っている点もある。

ウラヌスは単為生殖で生まれ、クロノスは有性生殖で生まれた。そしてウラヌスは去勢されたが、クロノスは(口から)我が子を生み、去勢はされなかった。また、預言をおそれ、石を飲み込み、岩をもって殺された。

反復だが、完全なるコピーではない。変化は不可逆的だ。クロノスが「預言をおそれる」ことから伺える言語の領域の拡張は、完全に土星的なものだと言えるだろう。でも、本来であれば天王星土星の順番のはずなのに、(発見された順番で命名されるから仕方がないけれど)天王星が革命的、土星が封建的なイメージになっているのはおもしろいな。だけど現代から見ると、古代のほうがあらゆる意味で「新しい」ことはある。たとえば、単為生殖。我々の祖先は単為生殖で増えた。そして現代、再生医療研究の進歩によって再び可能となるかもしれない。天王星による「革命」。

去勢が(ゼウスを父とした場合)曽祖父の代でしか起こらないのは、それだけ恐怖の対象であり、タブー視されているということでもあるんだろうか。祖父の代では、記憶として新しすぎる。また、クロノス→ゼウスの代替わりでそれを繰り返すと、"いずれ我々も去勢されうる"との意識が強まるだろう。わたしたちが恐れるのは「預言」よりも法則性、すなわち「科学」だ。

そういえば、クロノスによって断たれたウラヌスの局部がアフロディーテ(金星)になる、というのも、「奇貨」という感じがするね。悪趣味な例え方をすれば、土星さんと天王星くんによる初めての共同作業。美しいものは、もっとも新しい者の手により、もっとも古い者の一部から生まれる。別の言い方をすると、土星さんが産婆、天王星くんが妊婦か。クロノスが口から子どもを産むのもさまざまな連想を許してくれそう。口の中で子育てするカエルがいなかったっけ?それはさておき。

考えれば考えるほど、土星=古い、天王星=新しい、では割り切れなくなってきた。そもそもどんなルールでも陳腐化し、すべての権力は腐敗する。山羊座は前身の社会のルール、組織を壊し、また新たなものを作り出し、維持する。水瓶座の振る舞い方も同様で、対象が倫理、科学、美学などであるだけだ。

ルールは、意識されていないときがもっともよく働いている。でも、古代の人びとはあえてそこに土星を割り振った。それは、「わたしたちが今支配されているルールに気がつけよ」ということなのかもしれない。考えることを可能にするフックとしてあらかじめ用意されている。歴史上、「誰が言ったか」はわからないけれど、こういう思考の枠組みを作り出してきた匿名の人びとこそが、本当の意味で革命的なんじゃないか、なんてことを思ってしまうのだ。

キロンちゃん、あるいはケイロン師

蟹座、3ハウス、キロンちゃん。

ここの解釈がとても難しくて、対面診断とかワークショップとかに参加して他人の意見を聞いてみたいな〜と感じるところ。このメモでも最終的な結論は出ない。土星オポジションによる抑制が効いているのはもちろん、海王星オポジションによる脱構造化、非論理化も影響しているのかもしれない。水瓶座山羊座サイン強めの人間にとって、海王星で融かされちゃうとマジわけわかんないエリアになる。とりあえず、現時点のうろうろとした歩みを書き留めるものとして。

初等教育での傷。自分の知性や考え方に対する不信感。部分的には当たっている。親しくない他者に対して、意見を表明することをためらう。間違っていたら?わたしが常識を知らないだけ?頭が悪いと思われたらどうしよう?これらの葛藤が口をつぐませ、「まあいいか、わたしだけがわかっていれば」にたどり着く。

でも「わたしだけがわかっていれば」に現れているように、意外と自分自身の中では確固たる考え方になっていることも多いのだ。あとで、他者の会話を盗み聞いて、「よしよし、やっぱり間違っていなかったな」と答え合わせをして、自己満足している。

初等教育での傷のほうが難問だ。いわゆる幼児教育の教室に通っていたことくらいだろうか。このため、学習的には「早熟」だった。一方、現在に輪をかけたような人見知りで、仲の良い子が誘ってくれるまでロッカーの前で膝を抱えて待っている、という根暗な幼年時代を過ごした。小学校低学年の頃は、休み時間に、同じ学校に通っていた1学年上の従姉妹によく遊んでもらっていた。

優等生だが人見知りの強い少女。でも身内に対しては負けず嫌いと自己中心性を発揮する、典型的な内弁慶タイプだった。長女だが、父も母も「お姉ちゃんでしょ」と育てるタイプではなかった。隣近所のコミュニティーの中でも最年長であり、数年長く生きているがゆえの知恵で年下の子どもたちを従えて、権力を掌中におさめていた。「長女は責任感が強くて〜」という言葉を聞くと、ちょっとだけ耳が痛い。妙な責任意識はそれでも勝手に育つものだが、少なくともこれを「抑圧」とか言うと、妹から白い目で見られそうだ。

蟹座、家族のイメージ。父からの虐待があったわけでも、母からの教育や、独立への強いプレッシャーがあったわけでもない。これからの介護という問題はあるだろう。でもそれは生育時のトラウマではなく、キロンの表象とは少しずれる気もする。

蟹座、2度のサビアンシンボルは、"広く平らな場所の上に吊るされた男"。タロットカードだとハングマンだ。人生の挫折と失敗。そこから欲や執着を手放し、幸福な自己犠牲の精神に至る。うーんうーん。とんちが出ないな……(デイリーポータルでよく見る表現。好き)

3室なのが解釈をさらに困難にしてるんだよなー。6室の健康問題なら、ダイエットやセルフネグレクトのことを指すとも考えられるし、8室なら無意識下のセックスへのコンプレックスがあると推測することも可能になるかもしれない。だけど、3室はいずれとも遠い。

泣いているキロンちゃん、赤ん坊キロンちゃん。そんなイメージをSNSでもよく見かけるから引っ張られていたけれど、そもそもの神話に立ち戻って、半人半馬の医師・教師として見るべきなのかもしれない。好色、粗野、粗暴とされる素因を受け継ぎながらも、賢者のごとく振る舞い、また尊敬され、しかしながらまるで自ら暴力を引き寄せるように斃れ、「聖性」である不老不死性を手放さなくてはいけなかった。だが、かえってその英雄的な行為が讃えられ、星座となった。両義性の中で、宙吊りにされているアイデンティティー。まるで神を求めながら神の愛にふさわしくないと葛藤し、救いから逃げるような態度。うーん、惹かれてしまうんだよなー。

ここまで考えていくと、「吊るされた男」のイメージと重なる。自らの罪(もしかしたら彼が為した罪ではないかもしれない。けれど彼が「負うべき」罪だ)ゆえに宙吊りにされ、処刑されるまでの、一時の間。羞恥や悔悟があっても、覆い隠したり、逃げ出したりすることもかなわない。運命に身を委ねるしかないと決心したとき、彼は「心の中で」解放される。

そういえば、萩尾望都さんが書かれていたと思うんだけど、「人との距離感が取れない。近づきすぎては拒絶されて傷つき、離れすぎては孤独感でつらくなる。永遠に満たされないものがあった」といった言葉。だけど人を求めずにはいられない、そういう感情がわたしの中にもあるのではないかと。

今日の考察はこれくらい。気になるテーマなので、またいつか掘り下げたい。

Get Wild and Tough

天体、小惑星、点星点……とにかく総当たり戦で、タイトなアスペクトをピックアップしてみた。アスペクトはメジャー(0°、60°、90°、120°、180°)のみ。結果は以下の通り。いずれもASTRO DIENSTの計算上は誤差0°となっている。

①火星(1ハウス・牡牛座)ー土星(9ハウス・山羊座)、トライン

ここがトラインだと、かなり土星さんによる自制心の手綱が効いていそう。コントロール下で用いられる火、ガスコンロみたいな。大学で「わたし、ひとつの研究に没頭するの向いていないな」と気付かされたのがコンプレックスだったんだけど、当時もあれこれ講義を取って調べ物するのは苦じゃなかったし、未だに図書館とか古書店とかは好きなんだよね。

気が散りやすい、注意力散漫、というのはASC牡羊座の影響もあるんだろうか。火星が支配するサインでもあるから、火星ー土星トラインで傾向が強まるのかも。

あとは単純に、1ハウス・火星の特徴を効果的に発揮させているのかな。例えば、タフさとか。先日記事に書いたように、仕事上のトラブルがあった時期、生活面はだいぶ荒れていたけれど、結局のところ肉体的にも精神的にも持ち堪えられてしまった(会社は一日も休まなかったし、健康診断でも問題がなかった)。ここ15年、虫歯と外傷以外で病院に通っていない。謎のタフネスの原因はこれか。

②月(11ハウス・水瓶座)ーベスタ(8ハウス・射手座)、セクスタイル

聖なる火の女神、ヘスティア。かまどの守護神でもあり、職務への奉仕心や処女性をあらわす。理想主義を掲げる射手座女子(ベスタ)と水瓶座女子(月)で気が合いそうなイメージはあるけど、もはや全寮制女子校なのよ。奉仕の対象が神様なのよ。

③太陽(11ハウス・水瓶座)ーASC(牡羊座)、セクスタイル

「目的意識がはっきりしている」なんて大それたことは思わないし、常に意志も意図もぶれぶれだけど、「結局わたしの好きになるものは共通しているな」という漠然とした感覚はあるな。それが所与のもの、と考えると、太陽とASCとの協調関係があることに納得できるかもしれない。こうして見ていくと、ASC牡羊座の存在感は意外と大きいんだろうか。火の星座がいないと考えてきたけれど、牡羊座、そして1ハウス・火星が要所要所で効いている人生。

エリス(牡羊座・1ハウス)もASC牡羊座と1°でタイトなコンジャンクション。まあ、この世に生きている皆さんがエリスを牡羊座サインに持っているようだけど、わたしはASC牡羊座なのでちょっと意味を足すことを許してほしい。火星(アレス)の妹、エリス。表面的には見えないだけで、わたしのホロスコープ、だいぶ火のエネルギー充填されているのでは?

④火星(1ハウス・牡牛座)ーMC(山羊座)、トライン

火星の活力を利用して目標を達成していく、とも、戦いを通じて目標に到達する、とも読める。トラインなので、ごく自然に"闘争"に突入するのかもしれない。だけど実は、それほど心配していない。実は、MCには、火星よりはゆるめだが冥王星(7室・蠍座)もセクスタイルアスペクトを取っているんだよね。火星くんと冥王星さんが手を組んだら最強でしょ。

MCを経て、太陽ー月の11ハウスに突入、そしてドラゴンヘッド(11室・魚座)へと向かっていく。MCはその過程のアベンジャーズみたいなものだ。一時的に敵味方で手を組む。これほどアツい展開があるだろうか(わたしはこういうのが大好きだ)。再び太陽ー月の世界に戻ってくると、そのときは孤独だ。たった一人の存在に戻ったヒーローのようだ。あくまでも自分だけの力で、自分が救うべき人びとのため戦わなくてはいけない。でも、あのとき力を貸してくれた火星くんと冥王星さんのことを忘れないし、きっとそれの前と後とではまったく違う自分になっているのだろう。

とりあえずタフネスだけが取り柄の、頼りない主人公だけれども。

川は歌う

「狭くない?」と言いたくなるくらい、天体の居所が偏っているので、必然的にコンジャンクションが多くなる。太陽ー月(4度)、水星ー金星(7度)、海王星ーMCー土星天王星(7度)。「小惑星まで入れたらどんなふうになっちゃうの…?」と思って調べてみたけど、これが意外と増えない。ドラゴンヘッドーパラス(4度)くらい。惑星と小惑星の間ではコンジャンクションの関係がないのがおもしろい。

"コンジャンクションはたとえていうと、心の中でほとばしる力強い川の流れのようなもので、個人のパーソナリティを形成する重要な要因となります"

"統合、惑星相互の意味を強化"

『心理占星学入門』(岡本翔子)p.175

わたしという風景には太い川がたくさん流れているようだ。利根川筑後川吉野川……。堤防を越水・決壊を招き、洪水を引き起こす暴れ川のイメージ。時には川の流れが地形を変え、生活を壊滅させ、また移動を余儀なくさせる。だけど土壌をひっくり返し、新たな豊穣をもたらす原動力ともなるのだ。

コンジャンクションが発生しているのは、サインで言うなら水瓶座山羊座。ハウスは9〜11室。それぞれのカスプルーラーは木星(9室射手座)、土星(10室山羊座)、天王星(11室水瓶座)。やっぱり土星天王星の影響力は強そうだなあ。見えにくいところでは、木星が気になるかも。木星は2室、牡牛座サインだ。

わたしの9室は土星天王星という社会性を志向する惑星が入っているし、土星=規律化、天王星=自己及び社会の破壊・再構築の象徴だ。一見対立しているようで、ある種の脱個人を強いる、という点では両者は似ている。そこに、木星・牡牛座が微妙なニュアンスを与えているのかもしれない。

「なにいってるんだ、おれはおれだろう?!」

牡牛座26度の木星さんは、ちょっと暑苦しい。サビアンシンボルは、"恋人にセレナーデを歌うスペイン人の男"。「なあなあできたから見てくれよ!」とアピールしてくる木星さんに、土星さんと天王星くんはちょっとうんざりしているかもしれない。でも、木星さんは、よりにもよって感性をつかさどる金星ー水星のコンジャンクションにエネルギーを注ぎ込んでいる(セクスタイル、しかも金星とは1度と、かなりタイトな角度だ)。さながら拡声器でセレナーデを歌っているようで、たぶん隣のハウスにいる土星さん、天王星くんにも無視はできないだろう。

シンギュラリティはまだ起こっていない。わたしたちは宇宙と直接にリンクすることはできない。だからこそ、身体全体、感覚全部を尽くして、この世の喜びを謳歌しようではないか。まるで初めて世界を見るかのように。そのとききっと、わたしの知らない意識の古層からセレナーデが溢れ出すのかもしれない。

すきとかきらいとか

ホロスコープに対して「ここが好き」と言い出すと、シャドウを増幅しそうな気もするけど、わたしのホロスコープを眺めていて、お気に入りのポイントを語りたくなってしまった。

アセンダント牡羊座

初見で「えっ?!牡羊座?!」と思った。火の星座・直観型に縁のない人間にとっては、アセンダント牡羊座、1室火星(ここは牡牛座だけど)というのは、火のエネルギーとの繋がりを感じさせてくれてとてもうれしい。歩くのが速いとか、とりあえず動くときは前のめりとか、心当たりはある。アセンダントは太陽・月(11室)とかなりきっちりとしたセクスタイル。わたしが思っているよりずっと牡羊座の印象というのは表に出ているのかもしれない。

そういえばサビアンシンボルは何だろー?と思って調べてみたら、「ふたりのしかめ面した独身女性」

……わたしのホロスコープ、独身を暗示するもの多くない?!

土星さんつよつよ

ハードアスペクトだらけのホロスコープにおいて、火星(1室)・冥王星(7室)と調和しているのはでかい。各天体のファイナルディスポジターを見てみたら、冥王星さん以外は全員土星さんを指していたので、つい笑ってしまった。そして天王星(9室)、海王星(10室)、MC(10室)とコンジャンクション土星さんが支配する山羊座のサインにも、水星・土星天王星海王星と、もっとも多くの惑星が入っている。どうやらわたしの人生のテーマ、土星さんだぞ。

また、9室、山羊座サインの土星さん、というのも、土星さんらしさ全開でよい。ちなみにカラーチャートだと、天王星くん(17.0)に次いで、僅差の2位(16.8)である。水瓶座の支配星と副支配星がワンツーフィニッシュ、わかりやすいのかわかりにくいのか。

だけどひとつだけ。こんなつよつよ土星さんが、キロンちゃんにオポジションなのはこわすぎるのでやめてください……声もあげられなくなっちゃうから……

海王星ーMCー土星天王星コンジャンクション

9ー10室にかけて発生しているこの並び、まさしくこれが叶えられたらすてきな人生だろうなあ。わたしのこの泡沫みたいな取り留めのない妄想と、ルールを壊したい衝動と、でもルールを追い求める切迫感と。すべてが折り重なり、成就して、太陽・月の待つ11室に迎え入れられるとしたら、どれほどすばらしいか。

しかもトランスサタニアンは、わたしだけじゃなく、世代の夢なのだ。

わたしの宿痾、そして宿題

わたしは3年前、今よりも30kg太っていた。仕事での(わたし自身も中心的な役割を演じた)トラブル、人間関係の行き詰まりなどが最高潮に達し、会社への怨恨感情や、「もうどうにでもなれ」という投げやりな気持ちが仕事へのやる気を失わせた。転勤間際の時期、とりあえず外回りをしているふりをしていたけれど、成果はあがらなかったし、その工夫もしていなかった。みじめだった。会社組織や上司への責任転嫁により、自分自身の内部にある原因を見つめることは徹底的に避けた。

その時期に起こったのが、とにかく食事にふけることである。毎日、焼肉定食やすき焼き丼などを食べ、ジョッキでビールを飲み、休日はピザのMサイズを1枚丸ごと+フライドチキン、ケーキは2〜3個食べるのが当たり前だった。食べているときは何も考えずに済んだ。

部屋は荒れた。コンビニや外食チェーンの包装、空き缶やペットボトル、生ごみまでもが、とりあえずコンビニのビニール袋に突っ込まれた状態で放置されていた。においを放つようになってくると、その発生源を突き止めて、それを捨てた。虫が出ても、以下同文。

洗濯機の中には、洗濯したものの干さなかった衣類が溜まり、洗濯するときはコインランドリーか、クリーニング屋に持ち込んだ。その回数も頻繁ではなかった。風呂も、へどろのような水が排水溝から流れきらずに詰まり、異臭を放っていた。風呂用椅子の上に立って、シャワーだけ浴びた。歯磨きは、ほとんどしなかった。

おそらく周囲にも異様なことはバレていただろうと思う。直接的に指摘してくる人はいなかったけれど。清潔感はなく、口臭もあっただろうし、体型のせいで「いびき」もひどかった(「いびき」はのちに友人に言われた)

転勤(これは定例的なものだったが、上記のトラブルの調査により、時期は遅れた。そのこと自体もわたしを苛立たせた)が差し迫った時期、わたしはほとんど半狂乱になりながら引越しの準備をした。あれもこれもひとまず捨てて、部屋をなんとかまともな状態にしなくてはいけなかった。引越し当日も、洗濯機の裏から固まった衣類が出たり、カーペットの下から細かい虫の死骸が出たり、散々だった。あのときの業者さんには本当に申し訳なく思う。

転勤して、精神状態が少しマシになった。転勤した先では、一定の「戦力」として期待され、それを認められた、ということもプラスに働いた。また、わたしの前任はそれほど仕事ができるタイプではなかったらしく、プレッシャーも少しやわらいだ。失礼なことだが。

それでやっと歯医者に行った。上下で6〜7本くらい虫歯治療が必要であり、あまりの黄ばみに医師から「煙草を吸っていたの?」と聞かれた。まったくの非喫煙者にも関わらず、だ。転勤先では、当たり前だが、まだ部屋は散らかっていなかった。片付いているうちに、と掃除用ロボットを買った。休日は一日中それを走らせた。洗濯機は毎週土曜日に回すことに決め、1年くらい経った頃にダイエットを始めた。

未だにあの頃のことを思い出すと、胃の腑から苦い汁が込み上げてくる。発端から経緯、終着に至るまで、隅々までわたしの悪性があらわれたような出来事だった。今も整理できていないし、反省などもってのほか、会社に対する被害者意識も健在だ。同時に、わたし自身への信頼感も大いに毀損した。「おまえは自分はなんだかんだでうまくやれると思っているだろうが、これほどたやすく怠惰に流れ、生活を持ち崩すことができるのだ」と。

まだ、ホロスコープとうまく関連づけて話すことはできない。清潔意識の低下は、水星(山羊座)と金星(水瓶座)の合によるものかもしれない。考えない、考えたくない、という姿勢が、対外的な美意識を失わせた。金星にトラインしている木星(牡牛座)が、「傾向の拡大」という性質によってそれを増幅した。一旦ほころび始めると崩壊するところまで突き進んでしまうのが、わたしのホロスコープなのかもしれない。すべての惑星がアスペクトによって関連づけられている。

BCP意識ゼロかよお!

かろうじて生活を立て直せたのは、環境の変化が大きい。天王星は9ハウスに位置しているけれど、比較的遠距離の転勤も含んでしまってもいいかもしれない。外からやってくるような変容は天王星のやる気スイッチだ。そもそも不祥事の発生によって転勤を留め置かれたあたりから、わたしのどろどろとした感情的停滞が始まっていたのだろう。

わたしがトラブルを引き起こしてしまったこと、そしてその後の経緯について、まだうまく言語化も、内面化もできていない。わたしは今度こそ考えることをやめたくない。わたし自身の「病気」を見つめ、受け入れ、わたしをよりよくしていきたい。たぶんまた、転ぶだろうけど。転ぶからこそ。