わたしに踏まれた星とわたしが踏まれた星

ホロスコープ1年生。名前は「蜷(にな)」です。

川は歌う

「狭くない?」と言いたくなるくらい、天体の居所が偏っているので、必然的にコンジャンクションが多くなる。太陽ー月(4度)、水星ー金星(7度)、海王星ーMCー土星天王星(7度)。「小惑星まで入れたらどんなふうになっちゃうの…?」と思って調べてみたけど、これが意外と増えない。ドラゴンヘッドーパラス(4度)くらい。惑星と小惑星の間ではコンジャンクションの関係がないのがおもしろい。

"コンジャンクションはたとえていうと、心の中でほとばしる力強い川の流れのようなもので、個人のパーソナリティを形成する重要な要因となります"

"統合、惑星相互の意味を強化"

『心理占星学入門』(岡本翔子)p.175

わたしという風景には太い川がたくさん流れているようだ。利根川筑後川吉野川……。堤防を越水・決壊を招き、洪水を引き起こす暴れ川のイメージ。時には川の流れが地形を変え、生活を壊滅させ、また移動を余儀なくさせる。だけど土壌をひっくり返し、新たな豊穣をもたらす原動力ともなるのだ。

コンジャンクションが発生しているのは、サインで言うなら水瓶座山羊座。ハウスは9〜11室。それぞれのカスプルーラーは木星(9室射手座)、土星(10室山羊座)、天王星(11室水瓶座)。やっぱり土星天王星の影響力は強そうだなあ。見えにくいところでは、木星が気になるかも。木星は2室、牡牛座サインだ。

わたしの9室は土星天王星という社会性を志向する惑星が入っているし、土星=規律化、天王星=自己及び社会の破壊・再構築の象徴だ。一見対立しているようで、ある種の脱個人を強いる、という点では両者は似ている。そこに、木星・牡牛座が微妙なニュアンスを与えているのかもしれない。

「なにいってるんだ、おれはおれだろう?!」

牡牛座26度の木星さんは、ちょっと暑苦しい。サビアンシンボルは、"恋人にセレナーデを歌うスペイン人の男"。「なあなあできたから見てくれよ!」とアピールしてくる木星さんに、土星さんと天王星くんはちょっとうんざりしているかもしれない。でも、木星さんは、よりにもよって感性をつかさどる金星ー水星のコンジャンクションにエネルギーを注ぎ込んでいる(セクスタイル、しかも金星とは1度と、かなりタイトな角度だ)。さながら拡声器でセレナーデを歌っているようで、たぶん隣のハウスにいる土星さん、天王星くんにも無視はできないだろう。

シンギュラリティはまだ起こっていない。わたしたちは宇宙と直接にリンクすることはできない。だからこそ、身体全体、感覚全部を尽くして、この世の喜びを謳歌しようではないか。まるで初めて世界を見るかのように。そのとききっと、わたしの知らない意識の古層からセレナーデが溢れ出すのかもしれない。

すきとかきらいとか

ホロスコープに対して「ここが好き」と言い出すと、シャドウを増幅しそうな気もするけど、わたしのホロスコープを眺めていて、お気に入りのポイントを語りたくなってしまった。

アセンダント牡羊座

初見で「えっ?!牡羊座?!」と思った。火の星座・直観型に縁のない人間にとっては、アセンダント牡羊座、1室火星(ここは牡牛座だけど)というのは、火のエネルギーとの繋がりを感じさせてくれてとてもうれしい。歩くのが速いとか、とりあえず動くときは前のめりとか、心当たりはある。アセンダントは太陽・月(11室)とかなりきっちりとしたセクスタイル。わたしが思っているよりずっと牡羊座の印象というのは表に出ているのかもしれない。

そういえばサビアンシンボルは何だろー?と思って調べてみたら、「ふたりのしかめ面した独身女性」

……わたしのホロスコープ、独身を暗示するもの多くない?!

土星さんつよつよ

ハードアスペクトだらけのホロスコープにおいて、火星(1室)・冥王星(7室)と調和しているのはでかい。各天体のファイナルディスポジターを見てみたら、冥王星さん以外は全員土星さんを指していたので、つい笑ってしまった。そして天王星(9室)、海王星(10室)、MC(10室)とコンジャンクション土星さんが支配する山羊座のサインにも、水星・土星天王星海王星と、もっとも多くの惑星が入っている。どうやらわたしの人生のテーマ、土星さんだぞ。

また、9室、山羊座サインの土星さん、というのも、土星さんらしさ全開でよい。ちなみにカラーチャートだと、天王星くん(17.0)に次いで、僅差の2位(16.8)である。水瓶座の支配星と副支配星がワンツーフィニッシュ、わかりやすいのかわかりにくいのか。

だけどひとつだけ。こんなつよつよ土星さんが、キロンちゃんにオポジションなのはこわすぎるのでやめてください……声もあげられなくなっちゃうから……

海王星ーMCー土星天王星コンジャンクション

9ー10室にかけて発生しているこの並び、まさしくこれが叶えられたらすてきな人生だろうなあ。わたしのこの泡沫みたいな取り留めのない妄想と、ルールを壊したい衝動と、でもルールを追い求める切迫感と。すべてが折り重なり、成就して、太陽・月の待つ11室に迎え入れられるとしたら、どれほどすばらしいか。

しかもトランスサタニアンは、わたしだけじゃなく、世代の夢なのだ。

わたしの宿痾、そして宿題

わたしは3年前、今よりも30kg太っていた。仕事での(わたし自身も中心的な役割を演じた)トラブル、人間関係の行き詰まりなどが最高潮に達し、会社への怨恨感情や、「もうどうにでもなれ」という投げやりな気持ちが仕事へのやる気を失わせた。転勤間際の時期、とりあえず外回りをしているふりをしていたけれど、成果はあがらなかったし、その工夫もしていなかった。みじめだった。会社組織や上司への責任転嫁により、自分自身の内部にある原因を見つめることは徹底的に避けた。

その時期に起こったのが、とにかく食事にふけることである。毎日、焼肉定食やすき焼き丼などを食べ、ジョッキでビールを飲み、休日はピザのMサイズを1枚丸ごと+フライドチキン、ケーキは2〜3個食べるのが当たり前だった。食べているときは何も考えずに済んだ。

部屋は荒れた。コンビニや外食チェーンの包装、空き缶やペットボトル、生ごみまでもが、とりあえずコンビニのビニール袋に突っ込まれた状態で放置されていた。においを放つようになってくると、その発生源を突き止めて、それを捨てた。虫が出ても、以下同文。

洗濯機の中には、洗濯したものの干さなかった衣類が溜まり、洗濯するときはコインランドリーか、クリーニング屋に持ち込んだ。その回数も頻繁ではなかった。風呂も、へどろのような水が排水溝から流れきらずに詰まり、異臭を放っていた。風呂用椅子の上に立って、シャワーだけ浴びた。歯磨きは、ほとんどしなかった。

おそらく周囲にも異様なことはバレていただろうと思う。直接的に指摘してくる人はいなかったけれど。清潔感はなく、口臭もあっただろうし、体型のせいで「いびき」もひどかった(「いびき」はのちに友人に言われた)

転勤(これは定例的なものだったが、上記のトラブルの調査により、時期は遅れた。そのこと自体もわたしを苛立たせた)が差し迫った時期、わたしはほとんど半狂乱になりながら引越しの準備をした。あれもこれもひとまず捨てて、部屋をなんとかまともな状態にしなくてはいけなかった。引越し当日も、洗濯機の裏から固まった衣類が出たり、カーペットの下から細かい虫の死骸が出たり、散々だった。あのときの業者さんには本当に申し訳なく思う。

転勤して、精神状態が少しマシになった。転勤した先では、一定の「戦力」として期待され、それを認められた、ということもプラスに働いた。また、わたしの前任はそれほど仕事ができるタイプではなかったらしく、プレッシャーも少しやわらいだ。失礼なことだが。

それでやっと歯医者に行った。上下で6〜7本くらい虫歯治療が必要であり、あまりの黄ばみに医師から「煙草を吸っていたの?」と聞かれた。まったくの非喫煙者にも関わらず、だ。転勤先では、当たり前だが、まだ部屋は散らかっていなかった。片付いているうちに、と掃除用ロボットを買った。休日は一日中それを走らせた。洗濯機は毎週土曜日に回すことに決め、1年くらい経った頃にダイエットを始めた。

未だにあの頃のことを思い出すと、胃の腑から苦い汁が込み上げてくる。発端から経緯、終着に至るまで、隅々までわたしの悪性があらわれたような出来事だった。今も整理できていないし、反省などもってのほか、会社に対する被害者意識も健在だ。同時に、わたし自身への信頼感も大いに毀損した。「おまえは自分はなんだかんだでうまくやれると思っているだろうが、これほどたやすく怠惰に流れ、生活を持ち崩すことができるのだ」と。

まだ、ホロスコープとうまく関連づけて話すことはできない。清潔意識の低下は、水星(山羊座)と金星(水瓶座)の合によるものかもしれない。考えない、考えたくない、という姿勢が、対外的な美意識を失わせた。金星にトラインしている木星(牡牛座)が、「傾向の拡大」という性質によってそれを増幅した。一旦ほころび始めると崩壊するところまで突き進んでしまうのが、わたしのホロスコープなのかもしれない。すべての惑星がアスペクトによって関連づけられている。

BCP意識ゼロかよお!

かろうじて生活を立て直せたのは、環境の変化が大きい。天王星は9ハウスに位置しているけれど、比較的遠距離の転勤も含んでしまってもいいかもしれない。外からやってくるような変容は天王星のやる気スイッチだ。そもそも不祥事の発生によって転勤を留め置かれたあたりから、わたしのどろどろとした感情的停滞が始まっていたのだろう。

わたしがトラブルを引き起こしてしまったこと、そしてその後の経緯について、まだうまく言語化も、内面化もできていない。わたしは今度こそ考えることをやめたくない。わたし自身の「病気」を見つめ、受け入れ、わたしをよりよくしていきたい。たぶんまた、転ぶだろうけど。転ぶからこそ。

今夜、すべての神殿で

里中満智子さんのマンガ『ギリシア神話』をよく読んでいた。わたしが好きなのはアルテミスだった。ショートヘアで中性的、狩りの名人でありながら頭脳明晰。アポロンとの美貌の双生児っぷりにもうっとりした。だけど(だから?)オリオンとの恋愛にはがっかりした。

あんな直情径行のマッチョに惹かれなくたって……。ペルセウスみたいな、英雄でも影のあるイケメンならいいけど。

わたしの"推し"はヘルメスとデュオニュソスだった。なんだかんだでゼウスも憎めなかった。光源氏といい、ああいう永遠の末っ子、アイドルって嫌いになれない。閑話休題

わたしは自分自身の性的指向性自認で悩んだ記憶があまりない。おそらく「シス女性でヘテロ」だ。肉体的特徴に疑問を感じたことはなく(月経は面倒だった)、通い詰めるほど好きになるミュージシャンやコメディアンは男性ばかりだ。だけど、恋愛経験がほとんどない。もちろん、外見的な諸条件もあるだろうが、「相手が欲しい!」「愛されたい!」という内発的な動機も欠けていると言わなくてはいけない。

4ハウス、5ハウス、8ハウスに惑星が欠けていることは、以前の記事でも書いた。ただ、小惑星も含めると、ジュノー(乙女座・5ハウス)、ベスタ(射手座・8ハウス)が存在している。ジュノーは、ギリシア神話ではヘラ。結婚生活と家庭を司る神だ。それが、乙女座サイン。そしてベスタは、同じくかまどの神・ヘスティア。乙女座の支配星でもあり、禁欲・修養などをあらわす。よりによって「性愛」のハウスで。

乙女が、乙女が強いな!

ホロスコープが、これでもかこれでもかと畳みかけてくるようだ。そして太陽ー月のコンジャンクションが自己完結性を強調してしまっているのではないか。性指向はヘテロなんだろうな、と思いながら、もしも機会があったら同性を好きになることもありそうな気がする。人生で初めて告白を受けたのは、同性の友人からだった。

金星も太陽ー月と同じく水瓶座サインにある。ここでも自己矛盾がない。火星ー牡牛座、冥王星蠍座が引き起こしているだろう、恋愛へのあこがれ。それはさておき、地に足つけた現実生活の面では、パートナーや恋愛感情抜きでもやっていけてしまう。

わたしにももちろん欲望はある。たとえば、職場で能力を認められたいとか。同僚より仕事ができないと思われたくないとか。だけどこれらの欲望は「だせえ」。気にしているのは、周りよりも低く見られないこと。相手は特定の誰かではなく、匿名の人びとだ。ひいては、わたしの声を内面化したものだ。そこには他者との交歓も、衝突すらもない。

だれかを愛したとき、きっとその人は死後も生きる。それは、「記憶の中で生き続ける」とかいう生やさしいものではなく、忘れ去られたり、知り合いが一人もいなくなった後でさえ、死者は生きている。

わたしはそういう恋をしてみたいのだ。

さまよえる火星くん、そして太陽

火星くんについて、触れてこなかったことがある。実は火星くん、牡牛座のサインはあんまり気に入っていないらしい。火星ー牡牛座は「放浪」をあらわす座だそうな。火星くん、わたしのホロスコープ全体にこれだけ影響を及ぼしておきながら、実力を封じられていたとは。恐るべし、火星。

火星を火星たらしめるエネルギーは、牡牛座のサインと重なると、どこかのんびりおっとりとしたモードに変換されてしまうという。確かに、わたしのやる気は燃え上がっても長続きしない。モチベーションをあげることよりも、テンションを下げないこと。テンションが下がってしまっても、「このうんこみたいな仕事は、わたしがやらないと誰もやってくれないんだ……」(下品さには目をつむってほしい)と覚悟して、だらだらと少しずつでも手をつけること。

この「温度感の維持」というやり方こそが、「居心地よくねえけどがんばってやるか」というモードの火星くんを表しているのかもしれない。

むらっけのある火で調理をするのは難しい。生焼けだったり、焦げすぎたり、散々な思いをすることもたくさんある。だけど、「消えたかな?」と焚き火を覗き込んでみると、意外としぶとく種火が残っている。居心地の悪そうな火星くんを宥めすかしながら、わたしは今日も不恰好な料理を仕上げる。

一方、冥王星さんは蠍座のサインこそ「本来の座」らしい。……なんだかぞくぞくするような響きだ。とは言え、わたしは冥王星蠍座世代なので、おそらくあっちでもこっちでも冥王星さんはご機嫌うるわしく過ごしていらっしゃるのだろう。それはさておき。

惑星の品位という話題で、火星ー冥王星、そして太陽(こちらも「放浪」)の関係性に思い当たることがもうひとつ。病気のことだ。

わたしは小児アトピー、小児ぜんそく持ちで、子どもの頃は病院通いが日常だった。大人になってもしばらくの間、両手に謎の発疹が出たり、目の周りなどの皮膚の荒れに悩まされたりした。最近は、不思議とそれがない。

火星くんの攻撃性は、自己を防衛するためのものだと言う。これは、自他を超えて侵入する、冥王星さんの攻撃性とはまったく別のものだ。火星くんの働きは免疫力に他ならない。そしてわたしの、未熟な火星くんと太陽くんの組み合わせは、特に自我の未発達な幼少期にあっては暴走し、アレルギーという形であらわれたのだ、という解釈はどうだろうか。

牡牛座は、感覚器官だ。でも、口や喉は、異物と接する最前線でもある。すべてを排除してしまうと、生命力は喪われてしまう。火星くんは、牡牛座サインの下で分の悪い戦いを強いられている。時間をかけて、よく噛んで。吐き出すべきか、飲み込むべきかを吟味して。せっかくのスピードを活かしてあげられなくてごめんね。かれは、彷徨い出てしまいたい気持ちを持ったまま、四方八方に檄を飛ばす、とても優秀な司令官だ。

おうしに願いを

わたしは、恋愛経験はほとんどないくせに、根っからのおたく気質で、常に"推し"を追っかけているタイプだ。相手はミュージシャン、コメディアンとさまざまだが、ひとつだけ共通点がある。

牡牛座であること!

熱心にライブに通ったり、雑誌やDVDを買い揃えたり、聖地巡礼してみたり……と深追いしたくなる"推し"は、それほど多くない。わたしの人生における"最推し"3人が、なんと牡牛座なのである。わたしのホロスコープにおいては、火星(1ハウス・牡牛座)、木星(2ハウス・牡牛座)との関わりが深い。

わたしが牡牛座の人びとに共通して感じるのは、「自分自身を大切にすることに対して手を抜かない」ということである。

わたしの牡牛座の友人(女性)は、少しでも身体の不調があれば病院に通い、処方箋をきちんと使う。浪費家ではないが、価値があると思ったものには金銭を惜しまず、また手入れをしっかりするので物持ちがよい。新しいものに飛びつかず、試してみてよいと思ったものを長く使い続ける。モードを取り入れながらも、ファッション、メイクに人となりが表れていて、おしゃれだし、彼女にしっくりと来ている。

"推し"の一人にバナナマンの設楽さんがいるのだけれど、彼の「いいなあ」と思ったエピソードに、「古着を試着してから買う」というものがある。○○のブランドだから、とか、安いから、とかいう価値観で目がくもったりしない。だからこそ、たとえ既製服であったとしても、まるで特別にしつらえたように映えるのだ。彼ら・彼女らの手にかかれば、ありふれた毎日に魔法が起きる!(なんて、マクドナルドのCMじゃないんだけど)

わたしは結構、それが下手だ。ここ10年以上、眼科(コンタクトレンズ処方)と歯科(虫歯の治療)、整形外科(骨折)以外の病院にかかっていない。めったなことでは体調を崩さないという理由もあるが、「大したことではない」と判断する閾値が人よりも高い、つまり鈍いのだろう。

たとえば、ウォーキングやスクワットなど、自分自身に課したことをオートマティックにやり続けてしまう。雨が降ろうが、ワクチンの副反応で熱が出ようが、お構いなしだ。「しんどい」は甘えだ、と言う山羊座土星ディシプリンを、水瓶座天王星がミッションとすり替える、そんな共犯関係も成り立ってしまう。ルールには批判精神が湧くけれど、ミッションには弱いんだよなあ。

無理すること、我慢することが努力なのではない。本来の力を発揮できるよう、気持ちよくしておくことこそが、本当の意味での努力なのではないか。

わたしは、ホロスコープより先に、"推し"からそれを教わっていたのかもしれない。

月さん、君の名は

わたしの月は、太陽(11ハウス・水瓶座)とコンジャンクション。だからホロスコープ上、太陽のアスペクトとほぼ一緒になっていて、唯一の違いは、太陽のみ木星(2ハウス・牡牛座)とスクエアを形成していることくらいだろうか。あまりに太陽と結びついているので、かえって月の働きがわからない。

月さん、君の名は。

よく考えると、冥王星(7ハウス・蠍座)と火星(1ハウス・牡牛座)からスクエアでエネルギーを食らっている時点で、平気なはずはないと思うのだが、太陽隊長と一緒だから「海兵隊員は許可なく死ぬことを許されない!」なのか?

月の居所は蟹座だ。わたしの場合、そこには……キロン(3ハウス・蟹座)だ。ほらー!やっぱり傷ついてんじゃん!

3ハウスの象徴が兄弟姉妹であることに、思わずたじろいだ。妹には、負い目があった。わたしは大学進学時に実家を出た。もともと地元の大学に進学するつもりだったのを、遠方の大学へ進路変更したのは、担任の勧めによるものだったが、当時既に家にいることに苦痛を感じ始めていた。

わたしは長女であり、誰にもとめられることはなかった。まもなく弟も同様に遠方の大学に進学した。ただ、妹は、一旦は家を出たものの、諸事情があり、ふたたび故郷に戻らざるをえなかった。家族の成員が移り変わる中で、きっと彼女がコミュニケーションを潤滑に回す役割を担わざるをえなかった。わたしが逃げ出したさまざまな仕事を、やり遂げた。

父も母も年老いてゆく。心配ではあるが、自然の摂理だと思う。むしろ兄弟たちのことのほうが気にかかる。わたしの月、わたしのキロンは、ここにあるのだろう。

キロン(3ハウス・蟹座)は、土星天王星(9ハウス・山羊座)、そして海王星(10ハウス・山羊座)とオポジションの位置だ。……これだけでは終わらないぞ、という予感がする。とても騒がしいわたしのホロスコープの中で、吉角もコンジャンクションもなくぽつんと浮かんでいるのは、キロンだけだ。わたしがわたしのキロンをネグレクトしている。

きっとわたし自身もまだ認知していない、抑圧された影が、夕暮れの公園のブランコみたいに、ぼんやりと揺れている。ゆっくりと時間をかけて、わたし自身の月とキロンに向き合っていきたいと思う。